佐渡裕指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 第672回定期演奏会 - 毎日クラシックナビ
佐渡裕指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団が第672回定期演奏会でブルックナーの交響曲第5番を演奏【レビュー】
新日本フィルの9月のサントリーホール・シリーズで佐渡裕が、ブルックナーの交響曲第5番(ノヴァーク版)を取り上げた。
第1楽章冒頭、弦の響きを抑えに抑える。続く金管のファンファーレは総譜のffがfffに聴こえるほど強烈だ。全休止を経て、にわかに音楽が動き出し、アレグロの主部への移行が鮮やか。生き生きとした躍動と、時間の流れが変わったかのような静けさが交差する。強弱のコントラストが大きく、金管によるコラールは重厚そのもの。ロータリー式トランペットの角ばったドイツ的な響きが際立つ。一方、第1ヴァイオリン16人、コントラバス8人という大編成。音響を下から積み上げていくなか、ヴァイオリン群には強音だけでなく弱音にも厚みや密度が欲しいと感じた。弦の上声部により存在感が加われば、さらに豊かな音響空間が生まれるだろう。
第2楽章は冒頭の弦のピツィカートが厳かな空気を作る。オーボエの硬質な音色が楽章に秘められた苦悩の情感を映し出し、地の底から湧き上がるように現れる第2主題がすばらしい。フルートやオーボエなど木管楽器が個性を発揮すると同時にアンサンブルも見事。第3楽章もそうだが、総じてリズムが明確で力強い。そのスケルツォ風の第1主題とレントラー風の第2主題、金管の咆哮(ほうこう)と弦や木管の柔らかな歌との対話、明快なアーティキュレーション、漸強や漸弱のプロセスが、力強い推進力とともに示される。展開部の模倣や対位法的な箇所も丁寧に扱われ、コーダでは明るい和音が燦然(さんぜん)と輝く。トリオは一転しておどけた趣を見せ、中間部のヴァイオリンによる優しい旋律が美しい。
しばらく間をおいて始まった第4楽章。第1楽章冒頭の音楽の回想はどこか懐かしささえ感じさせる。まろやかで明るい光を放つクラリネットや柔らかな弦の旋律に続いて主部へ。フーガは各声部の「入り」が明確で、弦の旋律もリリカルで生き生きとしている。重厚な金管のコラール風の響きと透明感に満ちた弦との呼応も美しい。展開部の核心をなす二重フーガは遅めのテンポでじっくりと進められる。二つの主題が絡み合い、次第に巨大な構造を形づくる過程を、佐渡と新日本フィルは急がず、しかも緊張感を失わない。sempre fff以後も音量を緩めることなく、アクセントで鋭く打ち出されたフォルティッシシモの最後の和音とその余韻に、それまで積み上げてきた音楽の巨大なスケールが凝縮されていた。長大な交響曲を構築し、そこに生命を吹き込む力。指揮者佐渡裕の持ち味が存分に発揮され、オーケストラもそれに応え切った熱演だった。
(那須田 務)
【公演データ】
新日本フィルハーモニー交響楽団 第672回定期演奏会
9月25日(金)19:00 サントリーホール 大ホール
指揮:佐渡裕
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:西江 辰郎
プログラム:ブルックナー/交響曲第5番 変ロ長調WAB.105
他日公演:9月26日(土)14:00 すみだトリフォニーホール
