使用楽譜からみるメンゲルベルク②
使用楽譜からみるメンゲルベルク②

日本語要約
音楽学者・内藤眞帆による指揮者ウィレム・メンゲルベルクの再批評連載第2回。メンゲルベルクが使用した楽譜の書き込みを基に、ベートーヴェンとブラームスの解釈におけるテンポ操作や表現の特質を分析する。
全文(日本語)
金曜連載「名演奏家再批評」の第6弾として、音楽学者・内藤眞帆がウィレム・メンゲルベルクの使用楽譜をもとに再批評を行う連載の第2回。全4回のうちの2回目である。
メンゲルベルクは、自身のベートーヴェン解釈について、師フランツ・ヴュルナーを通じてアントン・シンドラーへと連なる系譜の継承を主張した。柔軟なテンポの揺らしやモチーフの強調はヴュルナーの教えに由来するとされる。例えば交響曲第5番の総譜には、楽節構造を示す数字や、オーボエのソロ部分への厳格な拍節が書き込まれている。
一方、ブラームスとは10代の頃に面識があり、作曲家本人から『ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ』の解釈を激賞された経緯がある。しかし指揮者としてのブラームス解釈は極めて主観的である。交響曲第3番第2楽章では、総譜に「四分音符=100」「104–108」といった大胆なテンポ指示を書き込み、第80小節の「Tempo Primo=76」で収束させるなど、独自のテンポ操作を行っている。
メンゲルベルクはフェリックス・ワインガルトナーやフリッツ・シュタインバッハら同時代の指揮者と交流し、解釈を比較検討する機会を持っていた。しかし、いかなる権威の系譜を援用しようとも、その音楽表現の責任は彼自身に帰せられるものである。
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