なぜ音楽は社会の縮図だと言われるのか? そして室内楽は「小さなオーケストラ」ではない 牛田智大氏インタビュー① - 東洋経済オンライン
ピアニストの牛田智大が語る室内楽の魅力と「音楽が社会の縮図である理由」
ピアニストの牛田智大へのインタビューにおいて、室内楽の魅力や音楽の本質について語られた。
牛田によると、室内楽の面白さはその「複雑さ」にあるという。大人数で演奏するオーケストラでは、全員で合わせるために解釈やフレージングを単純化し、歩み寄る必要がある。一方、室内楽は1つのアイデアに集約されるのではなく、異なるアイデアが常に共存することが本質であり、お互いの音楽観を持ったまま譲り合ったりぶつかり合ったりしながら音楽を作っていく点に魅力があるとする。また、個人の限られた想像力や経験の枠内で演奏するソロに対し、室内楽では独自の背景や音楽観、技術を持つ音楽家が集まることで、より複雑で生気に満ちた音楽が生まれると語る。
さらに牛田は、室内楽は人数が少ない分小さくまとまる「小さなオーケストラ」のように見られがちだが、人数が少ないからこそ複雑なことができる側面があると説明する。
「音楽は社会の縮図だ」と言われることについて、牛田は音楽が常に矛盾の中にあるからだと述べる。作品に含まれる膨大な音符や和声などの情報は、実現するために「時間」を必要とするが、音楽には定められたテンポがあるため、その枠内にすべての情報を収めきれないことが多い。そのため、演奏者は何かを削ったり優先順位をつけたりしながら枠内に収める作業を行うことになり、その中で生じるままならなさやせめぎ合いが社会と共通していると指摘する。社会でも多様な人々が妥協や犠牲を払いながら共存しているのと同様の考え方が演奏にも適用でき、その意味で室内楽は異なる考え方をせめぎ合わせながらより良いものを探す自由な感覚があり、一人ではできないことが実現できる一方で大人数によるデメリットが少ない点が面白さであると語った。