作曲家の向井響、デジタル技術で浄瑠璃の感情表現 新作「人の声/機械の声」日本初演へ - dメニューニュース
作曲家の向井響、イルカム派遣を経て浄瑠璃の声をAI処理した新作「人の声/機械の声」を日本初演へ
若手作曲家の向井響(33)の新作「人の声/機械の声 Voix Humaine /Voix Mécanique」が来年、東京文化会館の音楽祭で初演される。向井は東京文化会館のプロジェクトにより、パリのポンピドゥー・センターの音楽部門であるIRCAM(イルカム、フランス国立音響音楽研究所)に派遣され、同作を作曲した。浄瑠璃の声をデジタル技術で処理するユニークな手法について、向井は「声に感情が含まれる浄瑠璃は、世界でもまれに見る表現です。イルカムではこれまで聴いたことのない作品を作ることができます」と話している。
東京文化会館による「音楽クリエイター育成プロジェクトTokyo&Paris to the NEXT」は、イルカムと共同で邦人若手作曲家に委嘱を行う試みである。イルカムはポンピドゥー大統領のもとで開設が進められ、第1回世界文化賞受賞者の作曲家・指揮者であるピエール・ブーレーズを初代所長に1977年に設立された。音楽の研究・創造・伝播を軸に活動し、作曲家の芸術創作とデジタルテクノロジーなど科学領域の研究のコラボレーションを特徴とする。同プロジェクトでは向井響、北爪裕道、横山未央子の作曲家3人と、音響エンジニアの金原直哉の派遣が決定された。プロデューサーを務める東京文化会館音楽監督で作曲家・ピアニストの野平一郎(73)は、イルカムのフランク・マドレーヌ所長と相談してクリエイターを選定したと語り、自身もパリ留学中にイルカムでフィリップ・マヌリの電子音楽作品に出合って衝撃を受けた経験を振り返っている。
向井は1993年静岡市生まれ。桐朋学園大学音楽学部作曲科卒業、同研究科修了後、オランダのハーグ王立音楽院ソノロジー研究所修士課程を経て、2020年にベルギーのアントワープ王立音楽院大学院作曲科を修了した。現在はポルトガルのポルト大学大学院工学研究科博士研究員を務め、2018年にはストラスブール現代音楽祭で最優秀賞を受賞している。
新作「人の声/機械の声」には、女流義太夫の竹本越孝による人形浄瑠璃・歌舞伎の演目『菅原伝授手習鑑』の4段目「寺子屋」の声が使われている。向井は竹本越孝が語る浄瑠璃の音声から、怒りや悲しみなど4つの感情をAI(人工知能)にディープラーニング(深層学習)させ、節回しや特徴をデータ化して音に戻す手法や、複数の音声を分析・合成する音声モーフィング技術を用いている。また、5人の奏者による楽器音をマイクで拾いリアルタイムで加工・出力するライブエレクトロニクスも取り入れている。
本作は来年1月にイルカムで世界初演された後、2月26日に浜離宮朝日ホールで開催される「フェスティヴァル・ランタンポレル」のプレミエ・コンサートで日本初演される。なお、同じく育成対象となった北爪の作品は2028年、横山の作品は2029年に日本初演が予定されている。



