METが新シーズン開幕、ダーヴィドセンに注目
メトロポリタン歌劇場がヴェルディ《マクベス》新制作で2026〜27年シーズンを開幕、リーゼ・ダーヴィドセンが出演

メトロポリタン歌劇場(MET)は9月22日、ヴェルディ《マクベス》の新制作上演で2026〜27年シーズンを開幕した。
今回の上演の最大の呼び物はマクベス夫人を歌ったリーゼ・ダーヴィドセンであった。METにとってダーヴィドセンはスターであり、本役は今年5月にコペンハーゲンにおける演奏会形式の公演で手がけたばかりで、舞台での演唱は今回が初めてだという。彼女は登場のアリア、王の暗殺を企てる場面のアリア、〈乾杯の歌〉、〈夢遊の場〉などで観客から喝采を浴びた。歌唱面ではアジリタが滑りがちであったものの、幅広い音域における劇的な跳躍など全体として強いコミットメントが感じられ、とりわけ〈夢遊の場〉では高い集中力を示したが、中低音域における声の威力や表現力に課題があったのではないかと評されている。
表題役マクベスはクイン・ケルシーが歌い、声の威力という点で安定感を示した。バンクォー役のライアン・スピード・グリーン、マクダフ役のフレディ・デ・トマーゾ、ティルマン・ミヒャエル率いる合唱も安定感を示した。いっぽうで、音楽監督ヤニック・ネゼ=セガンの指揮は「前奏曲」から引き締まった様式感に乏しく、テンポも遅くなりがちで推進力があまり感じられなかったとされる。
ルイーザ・プロスキーの演出は、回り舞台を多用して場面転換を行うが、薄暗い舞台で、背景には瓦礫が積み上げられ、テューダー朝あるいはエリザベス朝を思わせる衣裳が用いられた。最後のマクベスの独白が含まれる一方、火刑に処されるマクベスを見せる演出などが行われた(9月22日、26日所見)。
《マクベス》のMET新制作は19年ぶりであった。METは9月24日、新たな観客層の開拓を目的としたイニシアチヴとして、これまでMETを訪れたことのないニューヨーカーを対象に、今シーズン7万枚のチケットを抽選で無料配布することを発表した。ニューヨーク市と共同で進められ、今年ニューヨーク市初のイスラム教徒として市長に就任したゾーラン・マムダニが舞台に登場しSNSでも発表を行った。
米国では、サンフランシスコ・オペラがオーケストラのストライキにより初日から公演キャンセルに追い込まれ、クリーヴランド管弦楽団もストライキに突入、ボストン交響楽団ではアンドリス・ネルソンスの契約を更新しない決定を巡る軋轢が続き、ケネディ・センターはドナルド・トランプ大統領が自らを会長に据えて以来危機状態に陥るなど、芸術を取り巻く環境が厳しさを増している。観客動員率が75パーセント程度に落ち込んでいるMETの施策の成否が注目される。
