エルル・チロル音楽祭で《さまよえるオランダ人》の新制作 ~受難劇劇場での制約のなか大胆な演出
エルル・チロル音楽祭でワーグナー《さまよえるオランダ人》を新制作上演、アッシャー・フィッシュ指揮・ケップリンガー演出

オーストリアで行われたエルル・チロル音楽祭(夏)が2026年7月2日から26日まで開催された。テノールのヨナス・カウフマンがインテンダントを務める。
同音楽祭ではシンフォニー・コンサートやリサイタルなど様々なプログラムが組まれるがオペラが中心となっており、今回はベルリオーズ《クレオパトラ》、プッチーニ《修道女アンジェリカ》、ワーグナー《さまよえるオランダ人》、ジェイムズ・ヴェナブル《私たちは幸運だ》(オーストリア初演)が制作された。
7月26日に受難劇劇場で上演された《さまよえるオランダ人》(初日:7月11日)は、音楽監督のアッシャー・フィッシュが指揮、ヨゼフ・E・ケップリンガーが演出を務めた。1500人収容の受難劇劇場は、1959年建設で天井の木造部分が剥き出しになっており、セルジュ・チェリビダッケも賞賛した音響を持つが、本来オペラ劇場ではないため技術的制約がある。
今回の演出では、ステージを囲むスクリーンに荒れ狂う海を投影し、前半はステージ全体を船の甲板に見立てた。オーケストラはステージ中央から後方に配置され、歌手と合唱はオーケストラ・ピットを囲んで歌った。設定は作品完成時の1842年頃で、産業革命と拝金主義の進行を背景とし、19世紀中盤の衣裳を身につけた登場人物と合唱が描かれた。
出演は、オランダ人役にクリストファー・モルトマン、ゼンタ役にニーナ・ベーツ、ダーラント役にガボール・ブレッツなど。
同音楽祭の来シーズンの復活祭ではワーグナー《パルジファル》が再演され、パルジファル役で再びカウフマンが出演する。また夏のメイン新制作はワーグナー《トリスタンとイゾルデ》(演出:ヨハネス・エラート、指揮:フィッシュ)が予定されている。