A little slice of death
ミッシー・マッツォーリの新作オペラ『リンカーン・イン・ザ・バルド』がメトロポリタン歌劇場で初演

ミッシー・マッツォーリによる初のメトロポリタン歌劇場委嘱作品『リンカーン・イン・ザ・バルド』の初回公演シリーズが行われた。
ジョージ・ソーンダーズの小説に基づくこのオペラは、自らの死への自覚に抵抗する霊たちの待機場所のような空間「バルド」に到着した11歳の少年ウィリー(エヴェレット・ソバース)の物語を描く。ウィリーは、バルドの長期滞在者である3人、すなわち結婚を成就させるはずの夜に梁の落下で亡くなったヴォルマン(ライアン・マッキニー)、同性愛関係の破綻後に手首を切ったベヴィンズ(ジョナ・ホスキンス)、死因は不明だが幽霊たちの精神的指導者となっている牧師(クリスティーン・ガーキー)に保護される。彼らはウィリーが永遠に閉じ込められないよう、バルドの先の来世へ向かうプロセス「マターライトブルーミング」を完遂させようとするが、ウィリーは父エイブラハム・リンカーンの安心感を得るまで留まりたいと抵抗する。
本作は重厚な設定の一方で、ウィリーを観客の代理人、3人を案内役として奇妙なバルドを巡るような側面を持つ。霧深い木立、緑や紫の光、人形たちによる視覚効果は、演出のリリアーナ・ブレイン=クルス、装置のアダム・リッグ、照明のステイシー・デロジエ、パペットデザインのジェームズ・オルティスによって手がけられた。
また、多彩な幽霊たちのキャラクター・スケッチ・アリアも披露された。バロン夫妻を演じたステファニー・ブライスとクレイグ・コルクロウ、樹上から復讐を誓うフランシス・ホッジ夫人役のジャナイ・ブルッガー、ティーンエイジャーのエリス・トレイナー役を演じたカウンターテナーのアンソニー・ロス・コスタンツォらが登場した。
台本作家のロイス・ヴァヴレクによる会話調のテキストに乗せて、マッキニー、ホスキンス、ガーキーの3人は軽妙に掛け合いを演じた。中でもガーキーの表現力は際立っていた。
一方、ウィリーの墓を訪れ南北戦争の犠牲に対する責任に苦悩するリンカーンの場面はピーター・マッテイによって歌われた。マッテイの美声やレガートが発揮されたものの、バルドの超現実的な世界観との対比において、戦争の歴史的苦悩の場面はやや浮き上がった印象を与えた。また、かつて奴隷だったトマス・ヘイヴンズ役をジョシュア・ブルーが繊細に歌った。