【第4回】1976年(前篇)1月号~4月号 レコード批評の使命とは?名評論とは?
【第4回】1976年(前篇)1月号~4月号 レコード批評の使命とは?名評論とは?

アーカイブ・シリーズ「『レコード芸術』新譜月評クロニクル」の第4回は、1976年前篇として1月号~4月号を振り返る。当連載は芳岡正樹氏が『レコード芸術』の過去の月評を再読・抜粋するものである。
1976年1月〜4月の新譜では、戦前のSP時代から活躍した巨匠と戦後派の若手が共演したセット物が注目された。2月号のシモン・ゴールドベルク(ヴァイオリン)とラドゥ・ルプー(ピアノ)によるモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ集(全16曲)、4月号のアルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)とダニエル・バレンボイム(指揮)ロンドン・フィルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集(全5曲)が挙げられる。小石忠男氏はゴールドベルクの演奏を「奇蹟的な若さ」と評し、志鳥栄八郎氏はルービンシュタインの演奏を「年齢に逆行するピアニスト」と称賛した。特に後者は第14回レコード・アカデミー賞協奏曲部門を受賞した。
1月号で推薦を得たエリー・アメリング(S)、ジェラール・スゼー(Br)、ダルトン・ボールドウィン(p)によるフォーレ歌曲全集について、畑中良輔氏はSP時代の名盤を引き合いに出しつつ、演奏家たちの豊かな音楽性を高く評価した。
また、マルタ・アルゲリッチの「ラヴェル:夜のガスパール/ソナチネ/高貴で感傷的な円舞曲」について、岩井宏之氏は前年のショパン・アルバムと比較しつつ、その完成度を評価した。さらに、アルゲリッチとジェイムズ・ゴールウェイ(フルート)が共演したプロコフィエフとフランクのフルート・ソナタ集も3月号で推薦を得ており、小石忠男氏は両者の室内楽的な調和を評価している。
当時の批評家たちは、SP時代の名演奏に親しんだ世代であり、LP時代の技術進歩やレパートリー拡大の中で、作品の本質を読者に伝えていた。