TCMオーケストラ・アカデミープロの現場で求められる力を、次世代の演奏家たちへINTERVIEW 荒井英治 山本裕康
TCMオーケストラ・アカデミーの取り組みについて指導陣の荒井英治と山本裕康が語るインタビュー

東京音楽大学の「TCMオーケストラ・アカデミー」は、若き演奏家たちがプロのオーケストラ奏者を目指して研鑽を積む実践の場である。年間5回の定期演奏会、個人レッスン、オーケストラ・スタディ実習、模擬オーディション、室内楽コンサートなど、多面的な教育プログラムを展開している。指導陣であり、10月18日に行われた第22回定期演奏会ではソリストも務めたヴァイオリニストの荒井英治とチェリストの山本裕康の両教授に、アカデミーの取り組みについて話を聞いた。
荒井は、定期演奏会に向けたリハーサルについて、実際のオーケストラの現場に近い方法を取りながら、分奏や合奏を重ねて準備を進めていると説明。山本は、プロの現場ではさまざまな作品に短期間で向き合うことになるため、できるだけ幅広い作品に触れてもらうようにしているとし、第22回定期演奏会でもドビュッシー、プロコフィエフ、ブラームスと時代も国も異なる作品を取り上げたと述べた。
定期演奏会は日本を代表する指揮者のもとで行われており、10月の演奏会には梅田俊明が迎えられた。梅田との共演について、荒井は指揮者からの言葉は大きな財産であり、学生時代から多くの個性に触れる重要性を指摘。指揮者が参加する本番3日前からの練習について、意識が変わることでオーケストラ全体の音の密度や集中力が変化したと振り返った。山本も梅田の熱心で本質的な指導が学生にとって刺激になったと語った。
ブラームスの「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」で学生と共演した二人は、アカデミー生に求める姿勢として「主体性」を挙げた。山本は、学生が指示や答えを待つ傾向があることに触れ、音楽に正解はないため、自分がどう表現したいかという考えを持って対話してほしいと求めた。荒井は自主性を育む場として学生が主体となって進める室内楽公演の重要性を挙げた。
アカデミーは開校から5年目を迎え、トランペット、フルート、打楽器、ヴァイオリン、コントラバスなどでプロオーケストラへ進む修了生も出ている。山本は単なる就職支援にとどまらず、プロとして活躍するための経験や考え方を次世代へつなぐことの大切さを述べ、荒井はここで学んだ人材が将来の日本のオーケストラ界を支え、次の世代を育てる好循環への期待を語った。
次回公演として「TCMオーケストラ・アカデミー 第23回定期演奏会」が2026年11月21日にTCMホール(東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパス)で開催される予定。野平一郎の指揮、砂田愛梨(ソプラノ)、TCMオーケストラ・アカデミーの演奏で、黄俊杰の交響曲第1番「意志と表象としての世界」、野平一郎のオペラ「マドルガーダ」から4つの場面、ラヴェルのバレエ音楽「マ・メール・ロワ」全曲版が演奏される。