注目のヴァイオリニスト、ノエ・乾に聞く J.S.バッハ《ソナタとパルティータ》を録音するまでの 10年のあいだに起きたこと
ヴァイオリニストのノエ・乾、J.S.バッハ《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》全曲録音に至る10年の歩みを語る

ブリュッセル出身でデュッセルドルフを拠点に活動するヴァイオリニストのノエ・乾が、J.S.バッハの《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》(全曲)をドイツの「アルス・プロドゥクツィオン」レーベルよりリリースした。
乾は約10年前に一度録音の提案を受けたが、当時はバロック音楽の専門家のもとで学び始めた時期であり、「今の自分が録音するのは無責任」と判断して見送った。その専門家であるヘルガ・テーネに約8年間にわたり師事し、テクニックだけでなく和声の流れや歴史的背景、様式の理解などを徹底的に学んだ。コンクール向けの速さや華やかさを重視する弾き方から離れ、フレーズの呼吸や和声の方向性を言葉として届ける演奏へと転換することに苦労したという。
乾は1764年マントヴァ製のトマゾ・バレストリエリ(モダン仕様)を使用し、ピリオド奏法の知見を取り入れつつ「ピリオド奏法とロマン派的なアプローチの中間」に位置する演奏を目指している。また、テーネが提唱した《パルティータ第2番》の〈シャコンヌ〉を最初の妻マリア・バルバラへの追悼曲とする説にも触れ、作品のドラマを考える上で大きな示唆になったと述べている。
録音においては、音符の正確さだけではなく大きな流れやライヴ感を重視し、長いフレーズを保ったテイクを用いて「つぎはぎ編集」は行っていないと語った。
9月8日には、タワーレコード渋谷店8階の「TOWER CLASSICAL SHIBUYA」にて新譜発売記念イベントが開催され、バッハの作品とヴェストホフ、テレマン、ジェミニアーニによる同形式の作品の弾き比べや、《パルティータ第2番》の〈ジーグ〉と〈シャコンヌ〉の演奏が行われた。
