『吉松隆/管弦楽作品集』の魅力と意義――小室敬幸(後編)
藤岡幸夫指揮による『吉松隆/管弦楽作品集』がナクソス・ジャパンよりリリース、音楽ライターの小室敬幸が交響曲や協奏曲の魅力と意義を解説

藤岡幸夫が指揮したBBCフィルハーモニック(1枚のみマンチェスター・カメラータ)により、1995〜2003年にかけてイギリスのCHANDOSレーベルで録音された7枚のアルバムがまとめられ、ナクソス・ジャパンから『吉松隆/管弦楽作品集』としてリリースされた。音楽ライターの小室敬幸による解説の後編では、交響曲第3〜5番と協奏曲が取り上げられている。
【当て書きされた協奏曲】
吉松の協奏曲は初演の独奏者のために「当て書き」されており、ボックスセットには初演者が参加した録音が収録されている。
・サクソフォン協奏曲《サイバーバード》Op. 59(1993〜94):須川展也のために作曲。末期がんを患っていた妹の看病をしながら書かれ、初演に間に合わせるため即興(アドリブ)要素が増えた。準独奏者としてピアノとパーカッションが活躍し、ジャズやフュージョンの要素が前面に出ている。
・ピアノ協奏曲《メモ・フローラ》Op. 67(1997):田部京子のために作曲。第1・2楽章で不確定記譜が1箇所ずつ使われている以外は多様な拍子が組み合わされ、浮遊感が生み出されている。田部ならではの抒情的な弱音が活かされている。
・チェロ協奏曲《ケンタウロス・ユニット》Op. 91(2003):BBCフィルハーモニック首席チェロ奏者のピーター・ディクソンのために作曲。1991年頃に試みられたチェロ協奏曲の楽想は、交響曲第2番《地球にて》第1楽章冒頭の悲歌へと形を変え、また交響曲第3番第3楽章にも2本のチェロの悲歌がある。両曲のBBCフィル録音でチェロ・ソロを弾いたのがディクソンであった。
その他、ギター協奏曲《天馬効果》Op. 21(1981〜84)やトロンボーン協奏曲《オリオン・マシーン》Op. 55(1992〜93)なども紹介されている。
【交響曲第3〜5番】
・交響曲第3番 Op. 75(1997〜98):副題のない絶対音楽で、伝統的な4楽章構成が意識されている。属音の保続低音的な反復から主音・主和音へ解決するドラマツルギーが重視され、吉松作品の中で最も古典派〜ロマン派的な性格を持つ。
・交響曲第4番 Op. 82(2000):作曲者は「パストラル・トイ・シンフォニー」と説明しているが、テンポの速い部分での変拍子など、プログレッシヴ・ロック色が強く「コントラスト」が際立つ。
・交響曲第5番 Op. 87(2000〜01):第1楽章と終楽章冒頭にベートーヴェンの「運命のモティーフ」が鳴り響きハ長調で終わるが、作曲者自身は「運命」交響曲ではなく一種の「ファウスト交響曲」と呼んでいる。両極端な要素が並列しコントラストが高められている。
吉松は2013年に交響曲第6番《鳥と天使たち》Op. 113も作曲しているが、藤岡は録音も指揮もしていない。
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