高関健指揮 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 すみだトリフォニーホール・特別シリーズ第1回
高関健指揮 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 すみだトリフォニーホール・特別シリーズ第1回

ベンジャミン・ブリテンの「戦争レクイエム」は20世紀後半を代表する声楽作品のひとつ。終戦記念日が迫る中、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団は、常任指揮者・高関健とのコンビで、没後50年を迎えた作曲家の大作に挑んだ。東京大空襲の惨劇に見舞われた墨田区に立つすみだトリフォニーホールへ一時的に移ったシリーズの初回として、反戦・追悼を表す本作が選ばれた。
高関はプレトークで、テキストから戦場が思い浮かびいたたまれない気持ちになると語っていた。当日は、高関の深い思いと過去の経験が昇華され、安定感の高いリードで曲の本領を示す力演となった。改修中の本拠地・ティアラこうとうに代わって同ホールを選んだ利点も生かされた。オーケストラは2分割され、指揮台を取り囲む12人の室内楽の後方に大編成の本体と合唱団が配置された。さらに客席3階に別働隊の児童合唱とオルガンを配置し、「天から降る」感覚を狙う重層的な空間性が発揮された。
高関は見通しよいアプローチで複雑な要素を的確にさばいた。室内オーケストラのエッジの効いた克明な表情が、柔軟に伸縮する楽団本体と好対照をなした。室内楽のトップはコンサートマスター戸澤哲夫の長女でソリストの采紀が務め、親子共演が注目された。
第一次世界大戦の詩人オーウェンの詩句と典礼文を歌う3人の独唱者、コーラスは強い共感を示す熱唱を繰り広げた。ソプラノの木下美穂子とバリトンの大西宇宙は高関と本作品を共演済み。木下は芯の強い声で「ラクリモサ」を歌い上げ、「ベネディクトゥス」では浸透力ある歌唱を見せた。初役のテノール宮里直樹と風格豊かな大西は、オペラティックな色合いを交えつつ、若き兵士らしい劇的表出力を示した。東京シティ・フィル・コーア(合唱指揮・藤丸崇浩)と江東少年少女合唱団(児童合唱指揮・伊藤心)も献身的な歌唱で熱量を高めた。第6章リベラ・メでは、戦死した敵同士の兵士が「共に眠ろう」と歌い、児童合唱とオルガンによる「楽園にて」が重なる部分で、沈うつな緊張感が研ぎ澄まされた。客席の集中度は高く、記念碑的な名演となった。