『吉松隆/管弦楽作品集』の魅力と意義――小室敬幸(前編)
ナクソス・ジャパンからリリースされた『吉松隆/管弦楽作品集』の魅力と意義を小室敬幸が解説

藤岡幸夫が指揮したBBCフィルハーモニック(1枚のみマンチェスター・カメラータ)により、1995〜2003年にかけてイギリスのレーベルCHANDOSで録音された7枚のアルバムがまとめられ、ナクソス・ジャパンから『吉松隆/管弦楽作品集』としてリリースされた。
音楽ライターの小室敬幸による解説(前編)では、吉松隆の交響曲を中心とした作風の変遷が論じられている。吉松の交響曲第1番は1990年完成の《カムイチカプ交響曲》Op. 40だが、それ以前に《鳥獣保護区》Op. 4、《朱鷺によせる哀歌》Op. 12、《ドーリアン》Op. 9をもとに第1番とする構想や、《鳥たちの時代》Op. 25を第2番とする可能性が検討されていた。吉松自身が「80年代様式」と呼ぶ手法は、前衛音楽の半音階を7音の旋法に置き換えてレイヤー構造で編み込み浮遊感を生むもので、《朱鷺によせる哀歌》や《チカプ》、《天馬効果》が該当する。一方、「90年代様式」では明快なビートやブロック構造によるコントラストが志向され、その転換期に書かれたのが《カムイチカプ交響曲》である。
吉松は「新ロマン派」と誤解されがちだが、本人が主張していたのは「新抒情主義」であり、第二次世界大戦後の現代音楽を経た上で前衛的アイデアを提示する「ポスト・ビートルズ」を自称している。翌年完成の交響曲第2番《地球にて》Op. 43ではポリリズムが軸となった。今回のボックスセットに収録された藤岡による録音は、作曲者の意図したテンポ感で演奏されており、作品の変遷を再検討するレファレンスとなる。
収録作品には交響曲第1番〜第5番のほか、《天馬効果》《メモ・フローラ》《サイバーバード》《オリオン・マシーン》《ケンタウルス・ユニット》《アトム・ハーツ・クラブ組曲》第1番・第2番、《朱鷺によせる哀歌》などが含まれ、クレイグ・オグデン(g)、田部京子(p)、須川展也(sax)、イアン・バウスフィールド(tub)、ピーター・ディクソン(vc)らが参加している。
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