【第6回(最終回)】1976年(後篇)9月号~12月号 話題性だけでなく聴き応えも満点
『レコード芸術』1976年9〜12月号の新譜月評を芳岡正樹が振り返る:クーベリックやショルティのベートーヴェン全集、クライバーの《こうもり》、アバドの《マクベス》などを紹介

アーカイブ・シリーズ「『レコード芸術』新譜月評クロニクル」の最終回として、1976年後篇(9月号~12月号)の新譜月評が振り返られている。
1976年9月~12月の新譜では、翌1977年のベートーヴェン没後150年を意識した「交響曲全集」録音の競合やオペラのリリースの集中が見られた。12月号ではクーベリック盤とショルティ盤のベートーヴェン交響曲全集が競合し、大木正興氏が双方を推薦している。
クーベリック盤は、9曲すべて異なるオーケストラを指揮する企画で制作された。大木氏はクーベリックの大指揮者ぶりや豊かな音楽性を絶賛し、第1番(ロンドン交響楽団)、第2番(コンセルトヘボウ管弦楽団)、第3番(ベルリン・フィル)、第4番(イスラエル・フィル)、第5番(ボストン交響楽団)、第6番(パリ管弦楽団)、第7番(ウィーン・フィル)、第8番(クリーヴランド管弦楽団)、第9番(バイエルン放送交響楽団)の各曲の演奏を高く評価した。
ショルティ盤は全曲を一貫してシカゴ交響楽団と録音したもので、第3、第5、第7、第9番が先行発売され、残る5曲が初登場となった。大木氏はショルティの大きな成熟や様式の確立を指摘し、水晶のような端正透明な古典美を描いた第8番をはじめ、第4番、第6番、第2番、第1番を称賛した。
オペラでは、11月号でカルロス・クライバー指揮バイエルン国立歌劇場の《こうもり》、12月号でクラウディオ・アバド指揮ミラノ・スカラ座の《マクベス》が登場した。高崎保男氏の月評によると、クライバーの《こうもり》はリズム感の卓抜さや豊麗さ、ヘルマン・プライ、ルチア・ポップ、ベルント・ヴァイクル、ユリア・ヴァラディら豪華キャストの歌唱が絶賛された。アバドの《マクベス》は、1975~76年シーズンのオープニング(ジョルジョ・ストレーラー演出)と並行して録音されたもので、ピエロ・カプッチッリ、ニコライ・ギャウロフ、シャーリー・ヴァーレット、プラシド・ドミンゴらの歌唱とアバドの統率力が高く評価され、1976年度のレコード・アカデミー賞大賞に輝いた。
