同じ曲なのにここまで違う 6人が語る同曲異演の楽しみ【後編/ベートーヴェン《第九》】
山崎浩太郎と編集部員5名がベートーヴェン《第九》の同曲異演盤を語る座談会を開催

ベートーヴェンの交響曲第9番《合唱》を題材に、山崎浩太郎と編集部員5名(編集A、B、C、D、E)による同曲異演の座談会が行われた。
山崎浩太郎は、ジョルディ・サバール指揮ル・コンセール・デ・ナシオンによる2021年盤を選択。ピリオド楽器の奏法水準が向上し、ガット弦と小編成ならではの透明な美しさが前面に出ており、複雑に絡み合う音を消さずに面白く聴かせていると語った。
編集Eは、ヨーゼフ・グラインドルがバスを務めるヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルの1951年8月ザルツブルク音楽祭ライヴ盤を選択。声を揺らさず太くまっすぐに届く歌唱を評価し、独唱者を入口にした聴き方を提示した。
編集Dは、パブロ・エラス=カサド指揮フライブルク・バロック・オーケストラの2019年盤を選択。冒頭から音の輪郭が明確で、古楽器の色彩と生命力があり、作品の構造がよく見えるため一気に聴くことができると述べた。
編集Cは、マンフレート・ホーネック指揮ピッツバーグ交響楽団の2019年ライヴ盤を選択。古楽奏法の成果を取り込みつつ、細部の強弱やバランスが極めて緻密に詰められ、身近でカジュアルな祝祭として聴ける点を挙げた。
編集Bは、ベルナルト・ハイティンク指揮バイエルン放送交響楽団の2019年ライヴ盤を選択。引退表明の約4カ月前の演奏で、誇張のない均衡の取れたフォルムに収まっており、オーケストラの献身と友愛が伝わる集大成であると評した。
編集Aは、セルジウ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルの1989年盤を選択。遅めの歩みのなかでハーモニーとダイナミクスを積み重ね、構成上の破綻を均しながらじっくり頂点へ向かう演奏であると述べた。
さらに座談会では、時代によるオーケストラの奏法や音色の変化、実演と録音の違い、配信時代におけるディスクの選び方や聴き比べの楽しみについても議論が交わされた。
