山田和樹が語る、東京混声合唱団の70年――「生きながらえる奇跡」をつなぐ
東京混声合唱団が創立70周年、音楽監督の山田和樹と常任指揮者の水戸博之が取材会で歩みと展望を語る

1956年に創設され、日本の合唱界を牽引し続けてきた東京混声合唱団(東混)が創立70周年を迎えた。2026年10月23日、東京芸術劇場にて音楽監督兼理事長の山田和樹と常任指揮者の水戸博之による取材会が開催された。
東京混声合唱団の音楽監督兼理事長を務める指揮者の山田和樹は、厳しい運営状況の中で歩んできた歴史を振り返り、「合唱団が存続できていること自体が奇跡。だから東混イコール奇跡です」と語った。世界的に見てもプロ合唱団が給料制で継続的に活動できる背景には放送局か歌劇場の専属であるケースしかないとし、独立した職業合唱団として存続し続ける難しさを知るからこそ、田中信昭から岩城宏之へと受け継がれてきた流れを自分の代で終わらせず、次の世代にバトンタッチしていくことが最大の使命だと自覚を口にした。
欧州での多忙な活動から日本を離れる時間も多い山田だが、「東混の歌声は自分の一部。苦楽を共にする家族のような存在だからこそ、投げ出すという選択肢はない。死ぬまでやり続ける」と述べ、東混の存在が自身の海外での活動を支える救いになっていると語った。
東混は資金のなかった黎明期に創設者の田中信昭が武満徹、三善晃、林光といった同世代の作曲家たちに手紙を書き、数々の名曲を生み出してきた。山田はこの歴史を「錬金術」と表現している。また、団員自らが発案した「給料査定」(指揮者の前で一人ずつソロで歌い評価を受ける)という象徴的な制度についても紹介された。
今後の公演として、2027年1月に三善晃の唯一のオペラ《遠い帆》の全曲演奏会が企画されている。山田は高校時代に三善作品と出会い、後に東混の指揮者となって初めて対面した際に「信じてますから」と言われた言葉を大切にしており、渾身のプロジェクトとなる。70周年を100周年へのスタートラインとし、海外での研鑽や地域に根差した「Meet up with TOKON」、ユース合唱団を通じた若手育成など、次代を見据えた挑戦を続けるとしている。
