台湾クラシック音楽の現在地 オーケストラ編②
台湾クラシック音楽の現在地 オーケストラ編②

日本語要約
2026年3月の台湾における国家交響楽団(NSO)とエバーグリーン交響楽団(ESO)の公演を軸に、両楽団の対比と台湾オーケストラ界の再編状況を考察する。NSOは反田恭平との共演や呂紹嘉による《第九》を通じ、その響きの特性と楽団の個性を再確認させた。一方、ズヴェーデンを招聘し世界水準を目指すESOは、急進的な改革と高い企画力で存在感を強める一方、音楽的構築における課題も露呈している。
全文(日本語)
2026年3月前半、台北の国家音楽庁にてダーフィト・ダンツマイヤー指揮、反田恭平(ピアノ)をソリストに迎えた国家交響楽団(NSO)の公演を聴いた。プログラムは林智文《來自第五》、ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」、シベリウス「交響曲第1番」。反田のブラームスは低音の支えと内声の陰影を生かした重層的な響きが特徴的であり、シベリウスではNSO特有のドライな透明感が際立った。反田とNSOは友好的な関係を築いており、9月には2026/27シーズン開幕コンサートへの出演も予定されている。
同月29日には、NSOの栄誉指揮者である呂紹嘉の指揮でベートーヴェン《第九》を聴いた。ソリストには黃亞中、蕭涵、藤井麻美、陳翰威らが名を連ねた。呂の指揮は正攻法であり、オーケストラの自発性を引き出しつつ、各声部を整理する手腕が光った。現地の聴衆からは、呂紹嘉時代のNSOを標準とする懐古的な評価も聞かれた。
一方、3月13日に台中国家歌劇院で聴いたエバーグリーン交響楽団(ESO)は、ヤープ・ヴァン・ズヴェーデンの指揮でベートーヴェン《第九》を演奏した。ESOはズヴェーデンの招聘や海外オーディションによる奏者確保など、世界水準の楽団を目指す急進的な改革を進めている。6月にはHIMARIを帯同したシンガポール公演、7月にはトーマス・ハンプソンとの日本ツアーを控えるなど、高い企画力と資金力を有する。しかし、ズヴェーデンの指揮による《第九》では、過剰な推進力が音楽の呼吸を損なう場面も見られた。ESOは現在、ズヴェーデン体制の編成と、台湾民謡などを演奏する従来の編成が併存する二面性を持っている。
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