使用楽譜からみるメンゲルベルク①
使用楽譜からみるメンゲルベルク①

日本語要約
音楽学者・内藤眞帆による連載「名演奏家再批評」第6弾。指揮者ウィレム・メンゲルベルクについて、現存する膨大な使用楽譜の書き込みを分析し、その芸術的アプローチを多角的に論じる全4回連載の第1回。
全文(日本語)
金曜連載「名演奏家再批評」の第6弾として、音楽学者・内藤眞帆がウィレム・メンゲルベルクについて使用楽譜をもとに再批評を行う。全4回の連載のうち、第1回が公開された。
ウィレム・メンゲルベルク(1871~1951)は、コンセルトヘボウ管弦楽団を約50年率いたオランダの指揮者である。ベートーヴェンの継承者としての自負を持ち、グスタフ・マーラーと親交があった。1895年から同楽団の首席指揮者を務め、現在の楽団の基礎を築いたが、戦中にナチス・ドイツの文化評議会に加わったことで戦犯として扱われ、戦後の音楽界から追放された経緯がある。そのため、同時代のフルトヴェングラーやトスカニーニ、ワルターと比較して残された録音資料は少ない。
20世紀の管弦楽作品の解釈は、1945年を境に大きな変化を迎えた。第二次世界大戦の終結に加え、磁気テープの発明や1948年のLPレコード発売により、音楽表現の記録・再現の可能性が拡大した。メンゲルベルクはこうしたメディアの過渡期に全盛期を迎えていた。
メンゲルベルクの芸術の全貌を理解する上で、彼が実際に指揮台で使用した膨大な量の総譜が現存していることは重要である。そこには緻密な書き込みが残されており、録音がない作品の解釈や、既存の録音資料の裏付けとして新たな示唆を与える。本連載では、音源とこれらの楽譜資料を分析し、ロマン主義的演奏の極致と評される彼の作品アプローチを論じる。なお、使用楽譜はオランダ音楽研究所(Nederlands Muziek Instituut)に所蔵されている。
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