【第5回】1976年(中篇)5月号~8月号 4人の名匠たちのいわくつきの(?)名盤たち
芳岡正樹が振り返る1976年のレコード界:ルドルフ・ケンペ、ラーザリ・ベルマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの記録

アーカイブ・シリーズ「『レコード芸術』新譜月評クロニクル」の第5回は、1976年5月号から8月号を振り返る。当時は、名指揮者ルドルフ・ケンペの急逝、ピアニストのラーザリ・ベルマンの西側デビュー、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー生誕90年による新発見音源のレコード化、バイロイト音楽祭100年祭が話題となった。
ルドルフ・ケンペは1976年5月12日に急逝した。7月号の月評で取り上げられたブルックナー《交響曲第5番》(ミュンヘン・フィル)は、出荷段階で訃報が届き「追悼盤」として発売された。評者の大木正興氏は、晩年のケンペが築いた新しいスタイルを評価し、「推薦」とした。
ラーザリ・ベルマンは、1975年のアメリカ楽旅で成功を収め、西側での名声を確立した。1975年11月録音のチャイコフスキー《ピアノ協奏曲第1番》(カラヤン指揮ベルリン・フィル)が6月1日に発売されたほか、日本ビクターからはリスト《超絶技巧練習曲集》が5月1日に緊急発売された。リストの月評(6月号)で岩井宏之氏は「推薦」とし、そのヴィルトゥオジティを評価した。一方、チャイコフスキーの月評(7月号)で志鳥栄八郎氏は、カラヤンのペースに合わせるベルマンの演奏を「期待はずれ」としつつも、演奏の質の高さから「推薦」とした。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラーについては、生誕90年を記念し、ドイツ・グラモフォンから6月1日に未発表ライヴ音源5点が発売された。オーケストラはすべてベルリン・フィルで、ブルックナー《交響曲第7番》(1951年カイロ)、ブラームス《交響曲第1番》(1952年ベルリン)、同《第3番》(1954年ベルリン)、ブラームス《ハイドンの主題による変奏曲》(1950年ベルリン)とヒンデミット《ウェーバーの主題による交響的変容》(1947年ベルリン)、チャイコフスキー《交響曲第6番》(1951年カイロ)が収録された。特にブラームス《交響曲第1番》は、大木正興氏により「推薦」と評された。

