LFコンサート
LF CLASSICWorld Classical Music News
🇯🇵 日本オペラGoogle News JP オペラ · 2026年8月9日 16:02 · レビュー· 約3分で読めます

佐藤正浩プロデュース/いずみホール・オペラ2026「ウェルテル」(演奏会形式) - 毎日クラシックナビ

佐藤正浩プロデュース/いずみホール・オペラ2026「ウェルテル」(演奏会形式) - 毎日クラシックナビ

日本語要約
佐藤正浩プロデュースによる演奏会形式のオペラ「ウェルテル」が住友生命いずみホールで開催された。ウェルテル役を演じた宮里直樹の歌唱表現や、佐藤正浩指揮のザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団の演奏、共演者たちの演技が評価された。
全文(日本語)

暗い情念を見事にみなぎらせた宮里直樹の圧倒的なウェルテル。

美しく叙情的な音楽に彩られた繊細な心理劇、といえば聞こえはいいが、このオペラに込められたものはもっと毒々しい。ウェルテルは、シャルロットという女性との関係にしか自分の存在意義を見出せなくなった青年で、いまでいえば心理的な視野狭窄(きょうさく)に陥ったストーカーである。音楽自体が耽美的に美しいが、この「狂気」が宿るかどうかで、演奏の深みはまるで違ってくる。

結論を先にいえば、ウェルテル役にはじめて挑んだ宮里直樹が、その暗い情念を見事にみなぎらせた。歌唱表現はむしろ端正なまでに整っていながら、そこに加わる色彩や表情がじつに生々しいのである。

第1幕では少し硬さがあった宮里だが、第2幕になって声に滑らかさが増すと、流麗な歌唱に深みが加わった。シャルロットが夫となったアルベールと一緒に教会から出てくるのを目にして、嫉妬に苦しみながら歌うソロでは、激情の背後に陰鬱(いんうつ)な影がまとわりつき、しかも影の微妙な濃淡をとおして、心の揺れまで表現される。かなり高度な歌唱である。その後の放蕩(ほうとう)息子の寓話に重ねた独白では、繊細な表現に、もはや命が支えられないほどの脆(もろ)さがにじむ。

佐藤正浩が指揮するザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団が、「狂気」を宿したウェルテルに見事に呼応した。暗めの音色を基本にしつつも、うねりながら色彩を横溢(おういつ)させ、ウェルテルの心情と絡み合った。

ほかの歌手陣も、ウェルテルとの対比で存在感が際立った。シャルロットの父である大法官役の妻屋秀和は、安定した歌唱で鷹揚(おうよう)とした人柄を表現し、内省的なウェルテルを浮き立たせた。

アルベール役の甲斐栄次郎は、社会の規範そのもののような折り目正しい歌唱で、思い詰めて周囲の平穏を脅かすウェルテルを浮き彫りにした。ソフィーの石橋栄実も、明るい声で天真爛漫(らんまん)さが表現され、陰鬱な悲劇における清涼剤のようで、ウェルテルの重苦しさが一段と強調された。

さて、ウェルテルとシャルロットだが、5月に新国立劇場で上演された「ウェルテル」では、直情的に突き進むウェルテルと、心が微妙に揺れ続けるシャルロットの対比がすぐれていると感じた。一方、いずみホールでは、宮里のウェルテルが激しい心の揺れを表現するだけに、それに戸惑いながらおおらかさも感じさせる池田香織のシャルロットは、相性がよかったかもしれない。その池田は、第4幕で瀕死のウェルテルを前にした強い感情表現が印象に残った。

また、岸和田市少年少女合唱団が歌う、クリアな響きの「ノエル」(フランス語でクリスマスの意)が耳に残った。それも悲劇や狂気を浮き上がらせるのに貢献する。

(香原斗志)

公演データ

佐藤正浩プロデュース/いずみホール・オペラ2026「ウェルテル」(演奏会形式)

8月8日(土)14:00住友生命いずみホール

プロデュース/指揮:佐藤正浩

舞台監督:松岡 敬太(ザ・スタッフ)

照明:原中 治美

ウェルテル:宮里 直樹

シャルロット:池田 香織

アルベール:甲斐 栄次郎

ソフィー:石橋 栄実

大法官:妻屋 秀和

ジョアン:内山 建人

シュミット:岡村 武琉

ケートヒェン:久光 美早紀

ブリュールマン:磯本 龍成

管弦楽:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団

合唱:岸和田市少年少女合唱団

プログラム

J.マスネ:「ウェルテル」全4幕 演奏会形式/フランス語上演・字幕付

▼関連キーワード解説 (3)
佐藤正浩人物・団体Wikipedia ↗

佐藤 正浩 は、日本の俳優。身長170cm、体重70kg、血液型A型。グレープカンパニー所属。

池田香織人物・団体Wikipedia ↗

池田 香織 は、東京都出身の日本の女優。ラジオパーソナリティーとしても活動している。2011年に、芸名を池田香織から池田嘩百哩へ改名したが、2015年に現芸名の池田香織へ戻す。ミッシングピース所属。

妻屋秀和人物・団体Wikipedia ↗

妻屋 秀和 は、日本の声楽家(バス)、オペラ歌手。

出典: Wikipedia 日本語版(各項目の要約・CC BY-SA)
次に読むなら
佐藤正浩 の他の記事
🇯🇵 日本オペラレビュークラシックナビ8/9 11:31
佐藤正浩プロデュース/いずみホール・オペラ2026「ウェルテル」(演奏会形式)
佐藤正浩プロデュース/いずみホール・オペラ2026「ウェルテル」(演奏会形式)
佐藤正浩プロデュースによる演奏会形式のオペラ「ウェルテル」が住友生命いずみホールで開催された。ウェルテル役の宮里直樹をはじめ、池田香織、甲斐栄次郎、石橋栄実、妻屋秀和らが出演。佐藤正浩指揮、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団の演奏により、マスネのオペラ全4幕が上演された。
佐藤正浩宮里直樹住友生命いずみホール
佐藤正浩プロデュース/いずみホール・オペラ2026「ウェルテル」(演奏会形式)
🇯🇵 日本オペラニュースGoogle News JP 声楽家8/7 03:31
オペラシーン牽引する歌手が集結 いずみホールでマスネ「ウェルテル」を演奏会形式で上演
オペラシーン牽引する歌手が集結 いずみホールでマスネ「ウェルテル」を演奏会形式で上演 (産経新聞) - Yahoo!ニュース
いずみホールにて、マスネのオペラ「ウェルテル」が演奏会形式で上演される。ウェルテル役に宮里直樹、シャルロット役に池田香織が出演する。
宮里直樹池田香織いずみホール
🇯🇵 日本オーケストラレビューGoogle News JP 音楽祭29/26 06:02
音楽評論家・ジャーナリストらによる2026年8月の注目公演レビューと10月のイチオシ公演選定
新風の調べ セイジ・オザワ 松本フェスティバルの「トゥランガリーラ」……26年8月 - 毎日クラシックナビ
音楽評論家やジャーナリストが2026年8月に開催された公演から優れたステージを、10月に予定されている注目公演を紹介した。8月公演ではセイジ・オザワ 松本フェスティバルのメシアン「トゥランガリーラ交響曲」やブルックナー交響曲第8番、神戸市室内管弦楽団の「スザンナの秘密」、いずみホール・オペラ「ウェルテル」などが選出。10月公演には新国立劇場の新制作「イタリアのトルコ人」、東京都交響楽団のブルックナー公演、上岡敏之指揮の京都市交響楽団、ファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団の「トスカ」、オーケストラ・アンサンブル金沢の「森のうた」などが挙げられている。
東条碩夫神戸市室内管弦楽団神戸文化ホール 大ホール
佐藤正浩 の記事をすべて見る →
同じテーマの最近の記事
🇩🇪 ドイツオペラニュースSlippedisc11/5 02:00
マリーナ・ヴィオッティが妊娠のためバイエルン州立歌劇場の『ウェルテル』を降板、ナディーン・シエラも健康上の理由で『マリア・ストゥアルダ』を降板
Marina, pregnant, cancels Munich
スイスのソプラノ歌手マリーナ・ヴィオッティが「妊娠のため」、来年5月にバイエルン州立歌劇場で行われる『ウェルテル』公演への出演をキャンセルした。シャルロット役の代役はマリア・バラコワが務める。また、ナディーン・シエラも健康上の理由により来月の『マリア・ストゥアルダ』を降板し、マリーナ・レベカがタイトルロールを引き継ぐ。
マリーナ・ヴィオッティマリア・バラコワバイエルン州立歌劇場
🇫🇷 フランスオペラニュースLe Monde Musique11/6 00:01
リヒャルト・ワーグナーの「ニーベルングの指環」が初演から150年経った今も人々を魅了し続ける理由
Pourquoi le « Ring » de Richard Wagner continue de fasciner les foules, 150 ans après sa création
提供されたテキストには、リヒャルト・ワーグナーの「ニーベルングの指環(Ring)」が初演から150年経った今も人々を魅了し続ける理由というタイトルのみが含まれており、本文はブラウザのJavaScript無効等のエラーメッセージのため詳細な内容は記載されていません。
ワーグナー
リヒャルト・ワーグナーの「ニーベルングの指環」が初演から150年経った今も人々を魅了し続ける理由
🇷🇺 ロシアオペラニュースClassicalMusicNews.Ru11/5 23:32
ソプラノの宝:ガリーナ・ヴィシネフスカヤはいかにしてオペラの頂点を極めたか
Клад сопрано: как Галина Вишневская взошла на оперный олимп
レニングラード包囲戦を生き延び子供を失った孤児の少女、ソ連人民芸術家となったモスクワのプリマドンナ、独自の絵画コレクションを集めたパリの貴族的な女性。これらはすべて、急激な転換、浮き沈みに満ちた長い生涯を送ったガリーナ・ヴィシネフスカヤの姿である。
ガリーナ・ヴィシネフスカヤ
ソプラノの宝:ガリーナ・ヴィシネフスカヤはいかにしてオペラの頂点を極めたか
タグ
佐藤正浩宮里直樹池田香織甲斐栄次郎石橋栄実妻屋秀和内山建人岡村武琉久光美早紀磯本龍成ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団岸和田市少年少女合唱団住友生命いずみホールウェルテル
原文を読む → Google News JP オペラ
この記事をシェア
X でシェアFacebookLINE
← 記事一覧に戻る