—13― ~レコードと放送の「事故」の話~ - 毎日クラシックナビ
音楽評論家の東条碩夫氏が回顧する、レコード制作やラジオ放送における数々の「事故」の歴史
音楽評論家の東条碩夫氏が、レコードと放送における「事故」にまつわるエピソードを振り返っている。
東条氏は、オイゲン・ヨッフム指揮によるブルックナーの「第8交響曲」の世界初全曲録音(1949年2月以前、推定1948年後半録音、78回転SPレコード11枚組21面)を聴くため「あたらくしあ」を訪れた。名器クレデンザで再生された音には独特の雰囲気があり、店主の久保田氏が約4分ごとにSPレコードを20回交換した。このヨッフム盤のSPには、第1楽章前半の面の変わり目で20小節の欠落がある。米国ブルックナー協会からの情報によると、意図的なカットではなくエンジニアがうっかり抜かしてプレスしたとされる「大事故」であるという。
東条氏によれば、こうした事故は他にもある。プロデューサーのジョン・カルショウが「ラインの黄金」全曲を録音した際にはテープ接続時に8小節の欠落が判明し補充した例があるほか、某レコード会社がブルーノ・ワルター指揮の「幻想交響曲」SPをLP化した際には第3楽章でSPの1面分を丸々抜かして接続(宇野功芳氏が発見)、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルのブラームス「第3交響曲」初期LPの第1楽章での8分音符の欠落、ある指揮者のベートーヴェン「第9」第1楽章での音符の欠落、小澤征爾指揮サンフランシスコ交響楽団の「新世界交響曲」見本盤の第3楽章開始部(反復されたスケルツォ主題冒頭)でティンパニのみが欠落していた件などが挙げられている。
さらに東条氏自身のFM東海(FM東京の前身)の駆け出しディレクター時代の失敗談も明かされている。深夜の生放送で、皆川達夫氏の解説テープ再生後、本来33回転でかけるべき「13世紀ドイツ農民の歌」を前番組の設定のまま45回転で再生してしまった。曲を途中でフェイドアウトさせ、33回転に切り替えて最初からかけ直したところ、後日リスナーから「3曲続けてという解説だったが4曲かかっていたようだ。もう一つの曲の題名を教えてほしい」というハガキが届いたという。