北欧の暮らしと音楽~スウェーデンとノルウェーのオーケストラ奏者が大切にする、休むことと働くこと
イェブレ響の永野花穂とトロンハイム響の乾詩織が語る、スウェーデンとノルウェーのオーケストラにおける働き方と音楽事情

スウェーデンのイェブレ交響楽団のヴァイオリニスト・永野花穂と、ノルウェーのトロンハイム交響楽団のヴィオラ奏者・乾詩織が、北欧でのオーケストラ奏者の暮らしや職場のサポート、地域に根ざした演奏活動について語った。
病気やけがへの補償として、スウェーデンでは最初の1週間はオーケストラ側から、以降は政府機関から給料の80%が支払われ、長期休養による解雇はなく復帰制度が整っている。イェブレ響は地区が運営し税金で賄われている。ノルウェーでも国の機関により最長1年間は給料が100%支払われる制度があり、指や背中を痛めて長期休養する奏者が利用している。医療ケアや福利厚生面では、スウェーデンでは一般会社員と同等の手当や年間利用枠(マッサージ、ジム、スキーなど)があり、ノルウェーの乾の楽団では保険会社を通じた整体・マッサージのカバーやジム会費の割引制度がある。
産休・育休については、スウェーデンでは男女問わず全員が取得する強い権利となっており、最長1年程度で復帰時期の選択や再取得も可能である。ノルウェーでも合計約1年の育休を両親が半年ずつ分け合うケースが多い。不在期間の演奏者はフリーランスなどを契約団員として手配する。
休みの多さについて、永野は受け身になりがちなオーケストラ業務の外で自主的に演奏する時間を持てる点を評価し、乾も人間としての充実感や健康につながると述べる。一方で、ゆったりした環境ゆえに自ら練習目標を立てる意識や、危機感の維持が必要である点も挙げられた。なお、スウェーデンでは移籍時の試用期間中も前楽団のポジションが無給扱いでキープされ、試用期間中の他楽団のオーディション受験も認められている。
聴衆やプログラムに関して、北欧ではクラシック音楽を崇高なものとして構えるのではなく、カジュアルに楽しむ人が多く、演奏後に聴衆から気軽に声をかけられるという。ノルウェーではグリーグが大きな柱であり、伝統楽器ハーディングフェーレの奏者をソリストに招いた協奏曲の演奏もある。スウェーデンではシベリウスがよく演奏されるほか、アルヴェーンやフォークソング、メルケル・メルケシュの作品なども取り上げられている。

