タン・ドゥン:オペラ『TEA ~茶は魂の鏡~』~「茶」が世界の人々を魅了する理由
タン・ドゥン:オペラ『TEA ~茶は魂の鏡~』~「茶」が世界の人々を魅了する理由

世界を席巻したサントリーホール委嘱の名作オペラ『TEA ~茶は魂の鏡~』(作曲:タン・ドゥン)が、20年ぶりに帰還する。2002年の世界初演以来、ヨーロッパ、中国、アメリカなど世界19都市で再演を重ねてきた本作は、今世紀に作られたオペラの中でも大きな反響を呼んだ成功作の一つである。
本作は、茶にまつわる愛と記憶の物語であり、哲学的な考察に満ちた作品である。音楽には、水、紙、石、陶器などの自然素材を楽器として用いる「オーガニック・ミュージック」の手法が取り入れられている。7月3日・4日にサントリーホールで行われる凱旋公演は、映画監督・演出家のシャーウッド・フーが新演出を担当し、タン・ドゥン自身が指揮を執る。
あらすじ:京都の寺で僧の聖嚮(せいきょう)が過去を回想する。かつて日本の皇子として中国を訪れた聖嚮は、皇帝の娘・蘭と結婚を約束する。弟の皇子が所有する知恵の書「茶経」を偽物と見破った聖嚮は、蘭とともに旅に出る。陸羽の娘・陸から本物の「茶経」を手に入れるが、皇子との奪い合いの中で蘭が犠牲となる。物語は再び京都の寺へ戻り、聖嚮は茶の哲学を語る。
作曲家タン・ドゥンへのインタビュー:
タン・ドゥンは、酒を「陽の揺るぎない精神」、茶を「陰の潤いある静けさ」と定義する。茶は友情と平和を語るための手段であり、互いを愛し考えるための哲学であると語る。また、酒は外界との対話の橋であり、茶は内面を映す鏡であると述べる。
本作の音楽には、水、風(紙の音)、火、陶器など『茶経』に記された要素が織り込まれている。タン・ドゥンは、古代の演劇形式やアニミズム的な観念から着想を得て、舞台上の境界を解体する「ホール・オペラ」という形式を創造した。最後の場面にある「茶を味わうことは、何よりも難しい」という言葉は、天・地・自己を味わうという「品」の哲学に基づいている。タン・ドゥンは、聴衆の心に直接届く旋律を重視し、歌いやすさを追求したと語っている。