Aからの眺望 #31 ハーゲン・クァルテット、家に帰る。
ハーゲン・クァルテットがTOPPANホールでの公演をもって45年の活動に終止符を打つ

ハーゲン・クァルテットが、45年にわたる活動のフィナーレをTOPPANホールで迎えた。彼らは「ハーゲン プロジェクト フィナーレ」と題された公演シリーズを行い、その第3夜(2025年11月13日)をもって活動を締めくくった。
ハーゲン・クァルテットのアンサンブルは、4人による対話の前に、まず個と個の対話がしっかりと存在することが特徴である。個々の声部を重ね、心のあり方を呼応させることで、全体の生命が流れ出し、歌い、踊る音楽を創り上げてきた。メンバーは、ザルツブルクの音楽一家であるハーゲン兄弟(ルーカス、クレメンス)とヴェロニカ・ハーゲン、そして1987年から加わったライナー・シュミットで構成される。彼らは、戦後世代の合奏におけるロジカルな精密さの追求とは異なり、それぞれが音楽を謳うことを活かしながら、豊かな調和と対話を実らせることを目指した。
彼らの演奏は、固定的な設計ではなく、流動的に変容する造型を特徴としていた。時には謎のまま終わる演奏もあったが、それは彼らが効率的なストラテジーをとらず、対話のプロセスにこだわり続けた結果である。若い頃の鋭い情熱から、試行錯誤を経て円熟味を帯びるまで、彼らは「完成」という目標を遠ざけ、オープンなプロセスを保ち続けた。2023年秋のトッパンホールでの演奏会では、彼らが模索してきた地平に辿り着いたという感銘を聴衆に与えた。
その後、次なるシーズンをもって活動を終えることが発表された。最後の来日公演では、第1ヴァイオリンのルーカス・ハーゲンが積極的に工夫を凝らすなど、最後まで続いていくストーリーの一幕のような姿を見せた。彼らは半世紀近く協働し、良き家族として帰還を果たした。


