女性ヴァイオリニストと「男性性」 ジネット・ヌヴー/イゾルデ・メンゲス③
原田真帆による連載「女性ヴァイオリニストと『男性性』」第3回が公開され、イゾルデ・メンゲスらの録音史における功績やマスキュリンな曲の演奏が論じられる

金曜連載「名演奏家再批評」は、新世代の書き手がクラシック音楽の名演奏家を各4回のリレー形式で論じる企画である。第10弾では、西洋クラシック音楽におけるジェンダースタディーズを専門に研究するヴァイオリニストの原田真帆が、録音史初期に足跡を残したジネット・ヌヴーとイゾルデ・メンゲスの2人の女性ヴァイオリニストをフェミニズムの観点から再批評している。全4回のうち第1回が無料公開、第3回を含む2回目以降は有料公開となっている。
記事本文において原田は、ヴァイオリニストのロールモデルとして男性奏者が挙げられる傾向に触れつつ、1990年代生まれあたりからアンネ=ゾフィー・ムター、漆原姉妹、諏訪内晶子、庄司紗矢香、ヒラリー・ハーンなどの女性奏者をロールモデルにする人が増えたと指摘している。依然として男性演奏家の愛聴盤を挙げる人が多数派であるものの、録音黎明期にはイゾルデ・メンゲスをはじめとする女性演奏家が大きく貢献した。メンゲスはJ.S.バッハの〈シャコンヌ〉やベートーヴェンの協奏曲の史上初録音、ベートーヴェンの《クロイツィル・ソナタ》の世界初全曲録音を行っている。
また、ヌヴーやメンゲスが、ベートーヴェンやブラームスのヴァイオリン協奏曲、《クロイツィル・ソナタ》といった「マスキュリン(男性的)」と呼ばれる楽曲を録音している点に言及。ブラームスの協奏曲で技術面の相談役を担ったマリー・ゾルダート=レーガーのエピソードを引き合いに出し、男性的に演奏できなければ権威に認めてもらえないという構造が、彼女たちの時代から100年後の音楽シーンでも観測されると述べている。連載第4回は2026年10月30日に公開予定とされている。