とある2つの「ロシア・ピアニズム」 ソフロニツキーとユージナ④
とある2つの「ロシア・ピアニズム」 ソフロニツキーとユージナ④

日本語要約
音楽学者・山本明尚による連載「名演奏家再批評」第7弾の第4回。ロシアのピアニスト、ヴラジーミル・ソフロニツキーとマリヤ・ユージナの録音観を比較し、ユージナにとっての録音が思想の表明であったことを論じる。二人は同じ師レオニード・ニコラーエフに学びながら、対照的な音楽家人生を歩んだ。
全文(日本語)
音楽学者・山本明尚による連載「名演奏家再批評」第7弾の第4回。本稿では、ヴラジーミル・ソフロニツキーとマリヤ・ユージナの録音観を比較する。
録音を「屍」と呼んだソフロニツキーに対し、ユージナにとってスタジオ録音は外界へ通じる窓であった。彼女はレコードの解説文を自ら執筆し、音と言葉の両輪で自身の思想を提示した。1954年の『ポーランド日記』では、ショスタコーヴィチの《前奏曲とフーガ》第16番・第24番を録音している。
ユージナの本領は同時代の音楽にあり、メトネルの《ソナタ三部作》作品11、ストラヴィンスキーの《セレナーデ》、ベルクのソナタ、クルシェネクの第2ソナタ、ルトスワフスキの《パガニーニの主題による変奏曲》、ヒンデミットの2台ピアノのためのソナタなどで、その密度と歌わせ方の妙が際立つ。特にヴォルコンスキーの《ムジカ・ストリクタ》(1957)は彼女に捧げられた作品である。
二人はレオニード・ニコラーエフの教室の同門であり、卒業演奏会で同じリストのロ短調ソナタを弾いた。ソフロニツキーは一回限りの奇跡を咲かせ、ユージナは信仰と哲学を友として権力に抵抗する説教者となった。この二人の対照的な姿は、「ロシア・ピアニズム」が単一の奏法に還元できない多様性を持つことを示している。
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