クラシックは再現芸術、人知を超える音楽の力 ヴァイオリニスト篠崎史紀氏 - art NIKKEI
元N響コンサートマスターのヴァイオリニスト篠崎史紀氏、再現芸術としてのクラシック音楽の本質と次世代育成を語る
NHK交響楽団のコンサートマスターを28年間務めたヴァイオリニストの篠崎史紀氏は、2025年3月末にN響を退任後、室内楽中心の演奏活動のほか、一般社団法人「Music Force」の運営や「東京子供ヴァイオリンコンクール」の審査員長などを務めている。
篠崎氏は、N響退団後も仕事の本質は変わらず、偉大な作曲家が創造した作品を再生し伝承することだと語る。オーケストラ作品の演奏頻度は減ったものの、作品は商品ではなく作曲家の思想や哲学が込められたものであり、楽譜という設計図から作曲家の意図を読み取り伝える再現と伝承の姿勢は変わらないとしている。また、退団後は指揮者がいない環境となり、自身の音楽観や世界観を直接的に伝達できるようになったと述べている。
今後の活動として、2026年11月7日に東京芸術劇場で開催されるプロデュース公演「学習院創立150周年記念コンサート」で指揮とトークを担当するほか、2027年3月には坂本龍一氏が創設した東北ユースオーケストラ(TYO)の福島・東京公演を指揮する予定である。室内楽シリーズ「MAROワールド」(王子ホール)や特別オーケストラ「マロオケ」の活動も継続する。
2025年5月に設立した教育団体「Music Force」では、正解が一つではない音楽を通じて子供の自立心や思考力を育むことを目指している。AIの利用が進む現代において、同じ楽譜から異なる答えが導き出されるクラシック音楽の体験は「正解のない問い」に向き合う力になると指摘する。さらに、クラシック音楽はヒットを狙うエンタメビジネスではなく美術館のような存在であり、良いものを残して次世代へ伝承していくことが重要だとし、16歳時にザルツブルクで出会ったアウシュビッツ生還者から得た「音楽には人知を超える何かがある」という言葉を自身の音楽人生の根幹に置いていると語った。
