N響に登場した巨匠指揮者列伝 第5回 シャルル・デュトワ
音楽学者・広瀬大介がNHK交響楽団とシャルル・デュトワの歩みや功績、録音を解説

創立100年を迎えたNHK交響楽団の歴史を彩った巨匠指揮者を取り上げる連載の第5回として、シャルル・デュトワ(1936〜)が紹介された。
デュトワがN響の指揮台に初めて立ったのは1987年9月4日のサントリーホールで、曲目はドビュッシー《遊戯》、ラヴェル《ダフニスとクロエ》第2組曲、ストラヴィンスキー《春の祭典》であった。続けて指揮した定期3プログラムでは、ベルリオーズ《ファウストの劫罰》、リヒャルト・シュトラウス《ドン・ファン》、リムスキー=コルサコフ《シェエラザード》、サン=サーンス《交響曲第3番》を取り上げた。
デュトワは1996年9月に常任指揮者、1998年9月にN響史上初のポストである音楽監督に就任した。デュトワの功績はフランス音楽の導入と評されることが多いが、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、シマノフスキ、ヤナーチェク、ファリャ、ピアソラ、武満徹など幅広いレパートリーを誇る。また在任中にはグバイドゥーリナ、タン・ドゥン、ペンデレツキ、細川俊夫、マクミランの5作品をN響委嘱作として世界初演した。グバイドゥーリナ作品《イン・ザ・シャドー・オブ・ザ・トゥリー》は箏の沢井一恵とともに1999年の北米公演でも演奏された。
商用録音には、デッカへのスタジオ録音としてプロコフィエフの《ロメオとジュリエット》抜粋と《交響曲第6番》、諏訪内晶子(ヴァイオリン)が参加した武満徹作品とチャイコフスキー《交響曲第4番》の2点がある。ライヴ盤としてはラヴェル《道化師の朝の歌》とベルリオーズ《幻想交響曲》、チャイコフスキーの交響曲第4番・第5番・第6番、1987年初登場時の《ドン・ファン》と《春の祭典》がリリースされている。また、2026年11月にはマルタ・アルゲリッチが2001年のヨーロッパ公演以来25年ぶりにN響およびデュトワと共演することが決まっている。
さらにオペラや大規模声楽曲の演奏会形式などの上演でも成果を挙げ、オネゲル《火刑台上のジャンヌ・ダルク》、ダッラピッコラ《囚われ人》、オルフ《カルミナ・ブラーナ》、ストラヴィンスキー《エディプス王》、ドビュッシー《ペレアスとメリザンド》、ビゼー《カルメン》などを指揮した。2015年12月の第1823回A定期ではR.シュトラウス《サロメ》(グン・ブリット・バークミン、キム・ベグリー、ジェーン・ヘンシェル、エギルス・シリンス出演)を指揮し、2003年6月の音楽監督としての最後の演奏会でもR.シュトラウス《エレクトラ》(エリザベス・コンネル、ジェーン・ヘンシェル出演)を取り上げた。

