第5回 LPによるレーベル拡大期(1950~60 年代) その5 イギリス・デッカとその他のヨーロッパのレーベル
英デッカによるモノラルLP時代の躍進と録音史をたどる連載記事第5回が公開

連載「クラシック・ レコードレーベルと演奏家・録音の100年」の第5回では、モノラルLP時代にffrr(Full Frequency Range Recording、全周波数帯域録音)の開発によって録音技術に革新をもたらし、EMIに対抗する一大レーベルへと成長したイギリス・デッカの歩みが取り上げられている。
1929年にレコード事業へ参入したデッカは、1937年にクリスタレート・レコードを買収し、録音スタジオとともにエンジニアのアーサー・ハッディとケネス・ウィルキンソンを獲得した。ハッディが第二次世界大戦中に開発したffrr技術を1944年から一般レコードに応用。当初は高音質に見合う演奏家が不足していたが、1946年にエルネスト・アンセルメ指揮ロンドン・フィルによるストラヴィンスキーのバレエ音楽《ペトルーシュカ》を録音したことが転機となった。
LP時代を迎え、1950年6月にはヨーロッパで先駆けてLP発売を開始した。プロデューサーのヴィクター・オロフに加え、スイスのモーリス・ローゼンガルテンの手腕により、アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団、ヴィルヘルム・バックハウス、カール・シューリヒト、ゲオルグ・ショルティなど欧州大陸の演奏家と契約を結んで勢力を拡大した。
さらに1950年にはウィーン・フィルと専属契約を締結。ヨーゼフ・クリップス指揮によるモーツァルトの《後宮からの誘拐》全曲録音をはじめ、クレメンス・クラウス、エーリヒ・クライバー、ハンス・クナッパーツブッシュ、カール・ベームらとの録音を重ねた。同レーベル屈指の名盤として、米コロンビア専属だったブルーノ・ワルターを借り受けて実現した、キャスリーン・フェリアーとユリウス・パツァーク独唱、ウィーン・フィル演奏によるマーラーの交響曲《大地の歌》なども記録されている。
また、1950年にはテレフンケンとの合弁でテルデックを設立。1951年に再開されたバイロイト音楽祭では、ジョン・カルショーらのチームがクナッパーツブッシュ指揮による《パルジファル》などを録音し、高い評価を得た。

